まず、ニュースによる景気循環関する理論的な分析として、消費の習慣形成について着目した研究を"lnternal and External Habits and News-Driven Business Cycles"と題する論文にまとめ、海外ジャーナルに投稿した。消費の習慣形成には内生的なもの(internal habit)と外生的なもの(external habit)の2種類があるが、既存のモデルではどちらをモデル構築の際に採用するかはモデルの振る舞いにあまり影響がないといわれていた。しかし、近年注目されているニュースに対しては、どちらを採用するかで経済の反応が異なることを理論的に示したのが貢献である。この論文はすでにEconomics Letters誌に採択され、2010年度に掲載予定である。 大恐慌時におけるニュースの役割を確率動学一般均衡(DSGE)モデルとベイズ推計の手法を使って分析する研究に関しては、アメリカおよび日本のマクロ経済のデータベースの構築を行った。また、ベイズ推計に用いるためのベースとなるDSGEモデルの構築も行い、適当なパラメータを与えた下での挙動についてのシミュレーション分析を行った。 構造VARのニュースのマクロ経済への影響を分析する研究に関しては、これまでと異なるニュースの識別方法を考案した。さらにその手法をアメリカのマクロ経済データに応用した。現在のところ、まだプレリミナリーなものであるが、伝統的な結果とは異なるインプリケーションを持つ結果が得られている。
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