1. 調査概要の修正点 プレテストの結果、当初の研究計画では対象の範囲が広すぎ、データの分析がまとまりを欠いたため、退院支援場面に限定し聞き取りをおこなった。また、価値の聞き取りは抽象度が高くデータの質が様々であった。そのため、インタビュイーが価値を意識した実践が出来ていること、得られたデータも多様な価値の交錯(価値体系)があらわれていること、この2つの条件に基づくデータの理論的サンプリングをおこなった。その結果、当初の計画より少ない18例の検討となった。 2. 分析結果: 退院支援に影響している多様な価値は、(1)利用者も含む関係者間の合意を重視する【利用者システム合意形成志向】、(2)組織、チームの方針を重視する【チーム・組織志向】、(3)利用者本人の尊重を重視する【本人尊重志向】、(4)退院後の生活のキーパーソンの意向を重視する【キーパーソン重視志向】、(5)地域の文化や社会的価値観を重視する(これには偏見も含まれる)【社会的価値志向】(6)法律、制度を重視する【法律、制度志向】、(7)専門職として考える利用者の最善の判断、義務を重視する【パターナリズム志向】、(8)疾患の状態(医学的判断)を重視する【科学的根拠志向】、(9)合理性や条件適応(疾患名や、保険の種類、障害者手帳の有無)を重視する【合理性・条件志向】、(10)経済性や職員の負担を重視する【サービス提供側都合志向】の10種類の価値に類型化された。 ただし分析は十分とは言えず、今回のデータの丁寧な検証や事例数の追加をおこないたい。そのうえで、各価値の関連性や強さ(濃度)等も検討の視野に入れながら、退院支援について、その特徴的な価値体系のより詳細な記述を目指していきたい。
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