本研究の目的は、曖昧な情報伝達が円滑なコミュニケーションの実現に必要不可欠であることを理論とロボットを用いた実験により示し、そこで得た知見を療育や介護などの社会福祉の領域へ応用することにある。平成21年度は、まずシミュレーションにより、社会規模が大きくなるに従って曖昧な情報伝達の必要性が高まることを理論的に示した。このシミュレーションにより、曖昧な情報伝達は未知の相手とうまくコミュニケーションを行うことを可能にすることを示唆する結果を得た。さらにロボットの顔表情の曖昧さに応じて、ロボットから裏切られたという印象を持ちにくくなることを、成人を対象とした心理実験により示した。具体的には、ロボットのアドバイスに信頼して従っていた被験者が、ロボットのアドバイスが信用できなくなった場合にロボットに従い続けるのかを、ロボットの顔表情の曖昧さを統制して実験をした。その結果、曖昧な顔表情のロボットのアドバイスには、ロボットのアドボイスが信用できなくなっても被験者が従い続けることが分かった。そしてこれらの成果をまとめた論文を執筆、現在投稿中である。 さらにこれらの研究と並行して、より様々な実験に応用可能なコミュニケーションロボット(PoCoBot)を用いた実験システムの開発を進めてきた。その結果、顔表情とジェスチャーを用いて様々な感情表現をPoCoBotにとらせることが可能になり、今後はこのロボットを用いて曖昧な情報伝達の有効性を検証することが可能になった。
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