研究概要 |
平成22年度は,前年度に行った本科研費にかかわる実験を「コミュニケーションにおける曖昧さとその機能」という題目で論文にまとめることができた.さらにポコボットというコミュニケーションロボットを用いた実験環境を整え,ロボットの言葉以外の曖昧な感情表現に対する成人と幼児の反応を調べる行動実験を行った.具体的には,まず成人を対象とした実験として,ロボットと会話を行っている最中のロボットの些細な仕草(視線を違うところに向ける)に対する被験者の反応と,ロボットの動きの単純な規則を発見するゲームにおける成績の関係を調べた.その結果,ロボットの視線移動につられて同じ方向を見てしまう被験者は,ロボットの振る舞いの単純な規則を発見することが困難であることが示された.またロボットのジェスチャーを被験者が模倣する実験において,特にロボットの視点に自分を置き換えて模倣をする場合,模倣をすることによって被験者がロボットに対して共感的になることが示された.さらに幼児で同様の検討を行い,どれだけ模倣によって幼児がロボットに興味を持つようになるのか,実験的に評価する手法を開発した.これらの検討の結果,特に母親とロボットが会話などコミュニケーションをとることにより,子供のロボットに対する興味が大幅に高まること,興味の増加に応じて自発的模倣や視線追従などの非言語コミュニケーションが子供とロボットの間で生まれることが分かった.今後は,発達障害の子供や高齢者を対象に同様の検討ができればと考えている.
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