本研究の目的は、大学生の教師志望者における出身階層、出身地域、学校経験、家庭経験といった来歴の特性を実証的に明らかにすることである。出身階層や生育環境による精神・態度形成への影響は数多く指摘されるところであり、来歴の検討によって教師志望者のパーソナリティやハビトゥスの一端を描きだすことを目指している。さらに、この分析を通じて、次世代の教師集団の社会的性格や文化的特性について予見しようと試みる。教員養成改革が進行する現在において、養成対象者の実態把握は喫緊の課題であり、その点でも本研究は貢献できると考える。 研究の主眼は、複数の大学における学生対象の質問紙調査を実施することにある。そして、実際の調査は平成22年度から本格的に実施していく予定である。よって、平成21年度はその準備期間とし、先行の調査研究の整理、質問文の検討、調査票の設計・作成を行った。 実際の作業としては、まず、平成18年に実施した大学生調査(京都大学教育社会学研究室実施)から、教師志望者を抽出して2次分析を実施した。これは調査実施に向けた予備的分析と位置づけられるものであり、具体的には親が教師である家族における子どもの教師志望への影響を検討した。成果として、日本教師教育学会第19回研究大会(於:弘前大学)にて研究発表を行い、現在は論文を投稿中である。続いて、先行の調査研究の文献収集を行い、応用できる質問文や分析の方向性について検討した。その上で、具体的に質問文を作成し、吟味を重ねながら調査票を完成させた。また、調査票作成に先立ち、有効な分析方法についても研究を行っている。そして、効果的と考えられた分析方法に即した形で質問文を作成した。
|