本研究は、貧困・低所得者の増大という状況のなかで、生活保護と給付つき税額控除に関する政策的含意を得ることを研究目的としている。具体的には、(1)生活保護の実施体制のあり方、(2)生活保護率の地域間格差の検証、(3)ワーキングプア向けの給付つき税額控除の実証的検討を、その研究課題としている。 本年度は、研究課題(1)生活保護の実施体制のあり方、研究課題(2)生活保護率の地域間格差の検証、については統計資料収集とそのデータ入力に努めた。研究課題(3)ワーキングプア向けの給付つき税額控除の実証的検討については、その成果として、拙稿「課税最低限と社会保障」駒村康平編(2010年近刊)『最低所得保障』を執筆した。生活保護基準と課税最低限の長期データを構築し、その対比から課税最低限が生活保護基準を上まわっているかどうか(その整合性が図られているかどうか)の歴史的検証を行った。また、給付つき税額控除についてのシミュレーション分析を行った。アメリカのEarned Income Tax CreditやイギリスのWorking Tax Credit-Child Tax Creditといった給付つき税額控除を日本に導入した際の貧困削減効果について検証を行った。その研究成果については、学会報告や学会誌への投稿を通じて、明らかにしていきたい。今後、税制と社会保障の調整が図られて、また給付つき税額控除が具体化されることも考えられる。これらの成果は、そうした政策動向において、基礎的な政策研究として位置づけられると考えられる。
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