研究課題
平成22年度は、知識移転を左右する要因の一つとされる吸収能力を規定する因子とそれを包含した概念化モデルの構築の為に、平成21年度に引き続きインタビュー調査を行った。当初は平成21年度でのインタビュー調査を踏まえて提示したモデルを用いて22年度に定量調査を実施する予定であったが、22年6月から7月にかけて学会で発表したところ、再度改変する必要が生じたので、22年度においても多国籍企業の海外現地法人6箇所(22年9月に台湾、23年2月に欧州)で改めてインタビューを実施した。その結果、本社から移転される知識の吸収能力を規定する因子として当初から提示していた、受け手からのフィードバックを吸収する「送り手」の能力を規定する因子に関しても言及する必要性があることが判明した。その結果、送り手と受け手双方の能力を規定する因子を包含するだけではなく、多国籍企業の地域統括会社に見られるように、知識移転の媒介者の存在も考慮した概念化モデルを提示するに至った。2年間にわたる本研究の理論的な意義は、吸収能力の規定要因が受け手のみに存在しているとされていた旧来の研究に対する反駁を実証しよう試みた点である。また実践的な意義としては、とりわけ多国籍企業本社による海外子会社の管理に関して、送り手としての本社が、知識という経営資源の有効な利用に対する管理監督責任を指摘した点である。
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International Journal of Business Strategy
巻: Vol.10,No.2 ページ: 22-35