平成21年度の研究は、まず国内外の文献を収集し、本研究の位置づけと明らかにされていない問題の所在について明確化することから始めた。 次に、インタビュー調査を行った。一つは技術規格の標準化を業界全体に推し進めようとしている自動車関連業界の企業2社(独系企業1社、日系企業1社)の標準化活動の担当者にインタビューを行った。二つは、台湾においてEMS企業2社、EMSに部品を供給するPC部品企業1社、日系企業1社、および台湾政府系調査機関にインタビューを行った。これらの二つの調査によって得られた知見は、技術規格を業界に拡大しようとする標準化戦略と、標準的な製品の大量生産によって業界を席巻しようとする意味での標準化戦略では一義的に議論できず、競争に与える影響もまた異なることが認識できた。今後の分析において考慮しなければならない大きな問題点として認識した。 研究の成果については、学会報告を二回(国内1回、海外1回)行った。そして、学会報告におけるコメントや質問の内容を踏まえたものをまとめ、21年度の成果として、学会誌に三本投稿した。「イノベーション・ダイナミクスにおける競争と業界標準化-半導体DRAM業界を中心に-」と、"Cooperative Technology Management for Consensus Standardization-DRAM Standards and IPRs-"、「多国籍企業間のグローバル業界標準化と知的財産権の協調的管理に関する考察」である。これらは、査読付き論文として二本は既に掲載可との連絡を受け、一本は現在審査中である。 22年度には、コンソーシアム型標準化における企業の技術戦略と知的財産権の管理およびその業界競争環境について、引き続きインタビューとアンケート調査によって明らかにしてゆき、学会での報告と研究論文の発表を行ってゆく。
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