2009年度は、これまでの研究で展開してきたマクロ経済学のハイブリッドモデル(長期モデルと短期モデルの特徴を兼ね備えたモデル)について、二つの方向での拡張を行った。一つは、技術進歩の内生化であり、もう-つはDGEモデル(Dynamic General Equilibrium Model)、つまり全ての市場が常に均衡しているようなマクロ動学モデルの形に仕立て直すことである。 前者については、井上・都築(2009)として書き表した。そこでは、これまでのハイブリッドモデルにAK型の生産関数を導入しており、「貨幣成長率が高いほど、定常状態における有効需要不足が減少し、経済成長率が高くなり、インフレ率も高くなる」との帰結が得られた。 後者については、近年のニューケインジアンのフレームワークを用いた。つまり独占競争的でかつ価格が粘着的なDGEモデルを展開した。そこへ、技術進歩を導入し、貨幣成長が定常状態における産出ギャップに与える影響を分析した。これまでの研究と同様に、「貨幣成長率が技術進歩率以上でなければ、定常状態における産出ギャップが解消されない」との帰結が得られた。 当年度は、その他、中央銀行が発行した貨幣をヘリコプタマネ一方式で、家計に直接給付した場合に、それが、ベーシックインカム(国民全員に生活に必要な最低限の所得を無条件で給付する制度)という社会保障制度になり得るかどうかを検討した。
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