研究課題
本研究では、南アジアの教育制度拡充における宗教教育機関の活用に関する調査を行った。これまでバングラデシュの政府系イスラーム神学校であるアリアマドラサは、普通学校教育と共通の修了証・学位を発行できることがわかっていた。また、非政府系のコウミマドラサは、独自の学位認定制度を持ち、その修了証・学位が、政府に認定されていないこともわかっていた。しかし、インド最大のマドラサであるデーオバンドマドラサの調査では、高等教育の学部レベルまで独自の基礎教育以外の普通教育は施さず、学部レベル修了後に、宗教学における高度なイスラーム学の専門性を身につけたうえで、イスラーム学専攻の修士課程に編入する事例が見いだされた。バングラデシュでは、80年代から現在まで、マドラサを「学校化」させたい政府と、独自性を守りたい国内のコウミマドラサ側との間で、政府認可を行うかどうかをめぐって交渉をしてきた経緯があることもわかった。これらは、今後も初等・中等教育拡充における宗教教育機関のプレゼンスが増していく傾向にあることも示唆している。このバングラデシュとインドとの比較研究によって、南アジアには、普通教育制度と宗教教育制度との相互の弾力的運用の可能性がある、ということが解明できた。これはさらに、マドラサをはじめとする宗教教育機関が多く存在するその他の途上国でも同様に、教育制度拡充における宗教教育機関の活用が模索される可能性を示唆している。
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南アジア研究
巻: 22 ページ: 82-89
Africa-Asia University Dialogue for Educational Development Report of the International Experience Sharing Seminar (2)
巻: 2 ページ: 223-236
国際教育協力論集
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