研究目的ならびに研究実施計画を参照すると、平成22年度には研究課題の二つの柱があった。 一つは、昨年度に収集した「ギーフェンベック基礎学校プロジェクト」に関する一次資料に、「方法的開放性」「テーマ的開放性」「制度的開放性」の理論枠組みから考察を加え、その学校構想の全体を把握することであった。それを通して、「教育的教授」論は、いわゆるオープン・スクールとして具現化されたことが明らかになった。この成果を、2010年度の日本教育方法学会大会において、「ギーフェンベック基礎学校プロジェクトの学校構想とその実際」とのテーマで発表した。 研究目的のもう一つは、ノルトライン・ヴェストファーレン州の85年版学習指導要領に対する「基礎学校プロジェクト」の影響関係を精査することにあった。申請時の計画では、デュッセルドルフ(Duesseldorf)にある州文部省を訪問する予定であったが、事前に確認したところ、同州カリキュラム開発研究所に必要資料が移管されていることが判明したので、訪問先を変更しなければならなかった。同カリキュラム開発研究所では、行政文書の閲覧と複写作業に取り組んだ。とりわけ、80年代当時の教育改革議論において、「教育的なもの」をどのように学校教育の中に取り入れていくか、との議論が活発に交わされ、そうした時代的な議論が「基礎学校プロジェクト」を経由し最終的に85年版学習指導要領の「教育的教授」の項目作成につながっている、との見通しが得られた。この成果は、次年度の早い時期に研究論文にまとめること予定である。
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