本研究では、福祉系高校における職業と大学への接続を検討することを目的として、福祉系高校生アンケート調査A・福祉系高校卒業生アンケート調査Bの分析、卒業生へのインタビュー調査C・福祉系高校教員インタビュー調査Dの実施と分析を行った。その結果、1.福祉系高校生の大半が幼少期以降の福祉的体験を背景とした明確な福祉への目的意識を持ち、2.能動的・内省的な実習経験や適切な実習指導が福祉分野への進路選択に及ぼすこと、3.実習不安への不十分な事前指導やリアリティショックへの不十分な事後指導が進路変更を招くこと、4.地域性(大都市圏と中核都市圏、農村部圏)が進路選択や学校生活への満足度に影響を与えていることが明らかになった。また、福祉系高校在籍中に介護福祉士資格を取得し、福祉系大学へ進学して社会福祉士や高校福祉科教員免許等を取得した者が、福祉分野や福祉教育分野での新しい中核層を形成していることも明らかになり、福祉系高校卒業後直ちに職業(介護従事者等)へ接続する者と、大学への接続を経て職業(相談員・公務員・福祉科教員等)へ接続する者との二重構造が示された。以上の結果から、福祉系高校卒業生の福祉分野における長期にわたる定着率の背景となる福祉教育における、1.入学動機の差異や性差等の生徒の個別性に対する配慮、2.資格取得や実習に対する高校タイプによる指導法の柔軟性とシステム化、3.地域産業や高齢化率、交通網など地域性に対応した進路指導の対応が重要であるとの知見を得た。従って、福祉系高校と福祉系大学との緊密で継続的な高大接続教育(デュアルクレジットシステムや高校生と大学生との直接的な交流を含む)に対する連携と、地域の施設や機関との日常的な交流(ボランティア活動や実習指導を含む)の推進が極めて重要であるといえよう。
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