1.日本銀行は量的緩和政策(2001年3月から2006年3月まで)を実施している中、「コミットメントの明確化」を2003年10月に行った。これは、2003年10月9日、10日に開催された『金融政策決定会合議事要旨』の内容から判断できるように、金融政策運営の透明化(金融政策の説明責任を果たすことと金融政策の有効性を高めること)を図るために「量的緩和政策の解除」条件に追加事項を課したと考えられる。このように金融政策運営に関する明確化が金融市場の予想形成に影響を及ぼし得たかを計量経済学の手法を用いて検証した。その結果、コミットメントの明確化を行った後、株価と金利間の因果関係に影響を与えたことが分かった。この内容は、「量的緩和政策下でのコミットメント条件の明確化と市場の予想形成」(『同志社商学』、第61巻第4・5号、pp.90-107、2010年1月)にまとめ、公刊した。2.アメリカではITバブルが2000年に崩壊し、デフレ懸念が生じた2003年に連邦準備制度では、「当面の間(低金利を)継続する」とコミットした。これは、日本銀行によって実施されていたゼロ金利政策と量的緩和政策と類似の政策であると考えられる。また、アメリカでは景気対策による財政赤字の累積が2003年以降拡大し、その経済への影響が懸念されていた。こうした金融政策と財政政策による影響が利子率構造に影響を及ぼし得たかを検証した。その結果、コミットメントと公的負債の保有額が影響を与えたと分かった。この内容は、地主敏樹教授(神戸大学)との共著である「公的負債の利子率構造への影響:アメリカの場合」(『国民経済雑誌』、第201巻第2号、pp.51-64、2010年2月)にまとめ、公刊した。3.また、現在では1.で分析した内容を開放経済に拡張し、その内容を論文にまとめている最中である。
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