研究概要 |
平成21年度の研究成果として以下の二点を挙げる. (1)Brummermeir and Parker(2005)は主観的確率を内生的に決める枠組みとして最適期待を提案した.今年度は不確実性が二状態で表せる単純なモデルを対象とし,京都大学の岩城教授と共同で最適期待によって決まる主観的確率が実際に観察されている逆S字型確率加重関数で決まる主観的確率と矛盾することを確かめた.成果をまとめた論文を日本オペレーションズ・リサーチ学会で発表した.また,Finance Research Lettersに掲載許可となり,2010年度に刊行される予定である. (2)近年の高次リスク回避度の研究が,逆S字型確率加重関数の特徴付けに有用であると予想している.今年度はその予備的な研究として,高次リスク回避度の最近の文献の調査を行った.また,Eeckhoudt and Schlesinger(2006)が提案した枠組みを利用して,Arrow-Pratt近似を繰り返し適用することで新しい高次リスク回避度を導出した.成果をまとめた論文を所属学部のセミナーで発表した.また,2010年度にシンガポールで行われるリスクに関する国際会議での発表が決まっている.2010年度中に国際学術雑誌に投稿する予定である.研究課題との関連を意識して,高次リスク回避度の研究も進めていく予定である.具体的には,Eeckhoudt and Schlesinger (2006)の枠組みを使って高次の相対的リスク回避度などの考察を進めていきたい.
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