研究概要 |
ICT業界においては、ネットワーク上で様々なソフトウェアをサービスとして提供する形態が注目されている。このようなICTビジネスのサービス化傾向において、本研究では、研究開発及びサービス開発活動における企業間関係の役割を明らかにすることを目的としている。本年度は、まず日本の通信産業を題材に、Nishioka and Minami(2009), Nishioka, Minami and Dawson(2009)において、提供する財がサービス化することで、企業間関係が一層重要になること、またその能力として外部リソースを統合する能力、そして顧客ニーズと統合されたリソースを提供する能力の接点であるFacilitatorという概念を提案した。これらの成果は2つの国際学会においても発表し、一定の評価を得ることが出来たが、今後、更なる精緻な事例研究が望まれていることが分かった。そこで、Salesforce.com、オラクル、そしてフューチャーアーキテクト社等、SaaSやクラウド型でビジネスを提供する最先端のサービスプロパイダ企業を調査対象として、インタビュー・文献により事例分析を行った。その結果、ICT技術を用いることで革新的なサービスイノベーションを実現した企業について、調査・研究する必要のあることが分かった。そこで、リテール業界に焦点を当て、まず始めに当該研究分野における先行研究調査を始め、その成果は本年度10月に西岡(2009)でレビュー論文として刊行し、SCM(サプライチェーンマネージメント)とマーケティングの融合が学際的にも実務的にも今後大きなテーマになることを示した。次に、SCMとマーケティングの融合に関して、ICT技術の進展がどのように影響しているか調査・研究するために、日本で靴下の製造小売り事業を行っているタビオ社を事例とし、理論・事例研究を行った。その成果は、平成22年3月に共同研究者との共著論文としてまとめられ、海外学会で発表し、学会内で大きな関心を得ることが出来た。以上より平成21年度の研究活動は、当初予定以上の成果と進捗を見ることが出来た。
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