研究課題
ICT技術の進展とビジネスのサービス化傾向が進むビジネス環境において、本研究は、研究開発及びサービス開発活動における企業間関係の役割を明らかにすることを目的としている。昨年度は、企業間関係の役割として、外部リソースを統合する能力、そして顧客ニーズと統合されたリソースを提供する能力の接点であるFacilitatorという概念を提案した。今年度は、精緻な事例研究を行うことを活動の主目的に設定し、小売業界におけるソリューション活動に焦点を当てた。具体的には、(1)市場駆動のSCMシステムを構築した靴下ビジネス,(2)GIS(地理情報システム)による小売出店計画サポートビジネス、そして(3)小売店舗の入店カウンターとレジ待ち予測システムの事例、以上3ケースについて、関係者へのインタビュー調査と実証実験の参画により精緻な調査活動を行った。得られた研究成果は、ICT技術の進展が、小売のビジネスプロセスを根本的に変化させること、そして店舗管理手法から業界のビジネスモデルまで変化させていることが明確となった。コンサルティングによる顧客企業の課題導出だけではなく、顧客とともに実現したい価値を共有し、システム導入における実証実験の積み重ねのような共創活動がソリューションの有効性上、重要であることが明らかになった。価値獲得活動における川上側の活動の重要性に伴い、バリューチェン内の焦点企業は、川下の市場動向が川上側へシームレスに情報共有されること、同時に顧客との共創作業が行えるビジネスのプロセスを構築すること、すなわち本研究が主張する企業間関係におけるfacilitator概念が一層重要になることが事例から明らかになった。詳細な成果は、研究協力者と共に国際学会での発表及び英文雑誌への投稿準備を進めている。本研究成果は、研究蓄積が十分でない当該分野において、企業間関係とICT技術を切り口に理論的貢献を提供し、3件の実践的な知見に富んだ事例を開発出来た。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
The Proceedings of EIRASS (European Institute of Retailing and Services Sciences), 17th Annual Conference
巻: CD-ROM配布のため記蔵無(CD-ROM配布のため記載無)