平成22年度は大きく分けて3つの方向で研究を進めた。(1)環境アセスメントをめぐる科学・技術と社会の関係について理論的な検討を進めた。環境社会学・科学社会学・科学技術社会論の先行研究や、研究代表者自身の事例分析の結果を吟味し、科学の専門性を生かすことと、多様な関係者・市民の参加を確保することの間の相克を克服し、これらを両立させるための社会的条件について検討した(『環境問題の科学社会学』第8章)。また、環境問題における科学・技術の役割について幅広い視点に立って整理した(「科学技術と環境問題」)。(2)環境アセスメントの制度化をめぐる歴史的過程の分析をおこなった。環境アセスメントに関して作成した詳細年表は、『環境総合年表』の一項目として刊行された。今年度は企業セクターの環境アセスメントへの関わり方に重点を置き、環境アセスメントの実務経験者へのインタビュー、環境コンサルタント関連の資料収集などをおこなった。また、40年あまりにわたる環境アセスメントをめぐる議論を通時的に分析するための基礎資料として、環境アセスメントを取り上げた新聞記事(とくに社説)と環境アセスメントをテーマにした座談会の雑誌記事を系統的に収集した。その上で、環境アセスメントの語られ方がこの間にどのように変化してきたのか、そうした変化が生じた要因は何かを分析した。研究の成果は近日中に学会発表をおこない、フィードバックを得て論文にまとめる予定である。(3)長良川河口堰問題を事例として取り上げ、環境アセスメントの制度化に伴って、この問題における科学の役割や、科学と市民参加の関係がどのように変化してきたのかを分析した。研究の成果はSociety for Social Studies of Science・科学技術社会論学会のJoint Meetingで発表した。
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