研究概要 |
平成21年度は、現代生産管理会計の生成プロセスについての文献レビューおよびファールドスタディを実施した。レビューの結果,実践理論に基づき研究を推進するのが適切であると判断した。ここで,実践理論と,行為者の意図の構造に注目し,あるマネジメントコントロールシステムがその局所的な状況下で,なぜ機能するのかを明らかにすることを目的としているものである。その際,「溶け込んだ機能性(situated functionality)」という概念に基づいて分析を展開するのだが,これこそが,ある生産管理会計の生成時点での局所的な機能および生成理由を明らかにする上で最適な理論であると判断できたからである。実践理論にもとづいたフィールドスタディの結果は,現在論文として取りまとめ中である。 なお,実践理論に基づいた分析だけではなく,仮説を展開するための予備的なフィールドスタディを実施した。仮説を展開するための分析は,実践理論とは異なる分析視覚によってたつものなのだが,このフィールドスタディでは,初期の管理会計の導入の要因として,情報の非対称性の増加,計画の不可能性,組織内の相互依存性の増加,ゲートキーパーによる知識移転,といった要因の存在が明らかとなった。来年度は,このフィールドスタディに基づいて,アンケート調査による実証的研究を行う予定である。
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