地方分権下にある介護サービス供給の地域間(市町村間)格差を表すひとつの指標として、2005年介護保険制度改革で導入された市町村所管の「地域密着型サービス」の提供状況について、イベント・ヒストリーデータを構築し、分析の基礎をつくった。そして、データの構築を受け、カプラン-マイヤー法やネルソン-アーレン法といったノンパラメトリックで簡便な生産時間分析を行い、各自治体(保険者)の性質、特に地理的要因によるサービス提供の時間的ラグについて考察した。その結果、豪雪、離島、半島、中山間といったいわゆる「条件不利地域」と呼ばれている指定地域であっても、その指定の種類によって極めて異なる傾向があることがわかった。本研究を遂行するにあたって、地域の現状を把握し、政策的なインプリケーションにもつなげていくため、介護サービスの供給の地域差を規定する要因に関する調査を行った。現状における主観的な意見を聴取するため、複数の市町村(保険者)を比較できる立場である都道府県の介護政策担当部局に対するヒアリング調査を実施した。その中で、いわゆる「条件不利」とされている地域において、実情に応じた「小規模・多機能型」「共生型」のサービスを様々を財源を用いて地域内で連携し実施している事例を把握することができた。このことは、1種類のサービスの提供状況の分析や生産効率性の測定ではその評価をミスリーディングしてしまう可能性を示唆し、継続年度の研究に役立てることができた。
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