1.当該年度の研究は、前年度収集したNGOリーダーのライフストーリーの分析、学会での発表、そして研究論文の作成に重点を置いた。特に、英国のStanding Conference on University Teaching and Research in the Education of Adults(SCUTREA)年次研究大会そしてアジア太平洋国際学会年次研究大会における口頭発表に対するフィードバックを、分析そして論文執筆に生かした。また英国滞在中のサセックス大学における質的研究方法などのセミナーへの参加や文献調査も、研究成果を深化させるのに役立った。文献調査の一部は、学術雑誌「国際開発研究」に掲載された。当該年度の研究実施計画では、さらなるフィールドワークを行う予定であったが、前年度のデータ収集で十分なデータが得られたため、フィールドワークは実施しなかった。 2.研究目的の一つである「NGOリーダーはどのように変革するか」の問いへの発見は以下のようなものであった。リーダーは、危機的な出来事やその他の経験を受け入れる用意があり、またそのような経験を進んで省察する態度が必要である。特に、これまで当然と考えてきた仮定や前提を吟味することが要求される。そのような振り返りから生まれた新しいリーダーシップのモデルを、自分が置かれている状況のなかで実験的に試みることにより、どのモデルがフォロワーに仕えるのに適しているかを判断することができる。この発見はサンプル数の少なさ等から一般化はできない。しかし文献調査そしてキーインフォーマント・インタビューも分析に組み込んでいることから、この発見はカンボジアの他のリーダーそして彼らの状況に、関連があり、役に立ち、そして適用できる可能性を投じる。よって上述の発見は、もう一つの研究目的である「どのようにNGOリーダーを育成するか」の問いへの間接的な提言となり、NGOリーダーの育成に有意義な示唆を提示するものと考えられる。英語による最終的な研究論文を通して、カンボジアのNGOセクターへフィードバックする予定である。
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