研究概要 |
本年度は,同一のサンプルに対し,3回の調査を行った。調査協力園は,21園(保育園13園,幼稚園8園)であった。1回目の調査(平成21年11月)では,幼児の自己制御機能と親の養育スキルとの関連を検討するため,2154名の幼児の保護者に対し,質問紙調査を行い,1449名の保護者から回答が得られた。2回目の調査(平成22年2月)では,幼児の自己制御機能と親の情動表出との関連を検討するため,1回目の調査で回答が得られた保護者に対し,質問紙調査を行い,1039名から回答が得られた。3回目の調査(平成22年3月)では,幼児の自己制御機能と社会的スキル・問題行動との関連を検討するため,担任保育者に対し,2回目の調査で回答が得られた幼児の社会的スキル・問題行動について質問紙調査を行った。 3回の調査の結果,以下の3点について明らかになった。第一に,自己制御機能の4つの側面(自己主張,自己抑制,注意の移行,注意の焦点化)のうち,自己抑制と注意の移行は,11月から2月の3ヶ月間で,発達的変化の見られる可能性が示唆された。第二に,親の9種類の養育スキルは,4つの自己制御機能の側面とそれぞれ異なる関連のあることが示された。家族の中での親の情動表出については,親和的・共感的な情動表現スタイルは自己制御機能に正の影響を,自己中心的で不快感を与える情動表現スタイルは負の影響を与えることが明らかになった。第三に,自己制御機能と社会的スキルとの間には正の関連が,問題行動との間には負の関連があることが確認された。 本研究では,1000名を超える幼児とその保護者を対象に,縦断調査を行った。その結果,幼児の保護者に対し,子どもに対してどのように振舞うことが,子どもの自己制御機能の発達に望ましいのかについて示すことができた。来年度もこの縦断調査を継続することにより,自己制御機能の発達とそれに与える親の養育行動および情動表出の影響を長期的な観点から明らかにできると考える。
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