研究概要 |
本年度は,19園(保育園11園,幼稚園8園)の子どもとその保護者,および担任保育者を対象に調査を行った。 第1の研究では,1,936名の年少児,年中児,年長児の保護者から質問紙に回答を得た。年長児のうち487名は,平成21年度の調査でも1回ないしは2回,回答のあった者である。この質問紙では,全員に子どもの自己制御機能について評定を求めたほか,子どもの気質,保護者の養育スキル,保護者の情動表現,配偶者の情動表現のいずれかに回答するようサンプルを分割して依頼した。第2の研究では,事前に保護者から同意を得た子ども70名に対し,注意機能に関連する3種類の実験(DCCS課題,ストループ課題,ワーキングメモリー課題)をコンピューターを用いて実施した。第3の研究では,111名の担任保育者に対し,子どもの社会的スキルと問題行動,もしくは,向社会性と攻撃性について質問紙で回答を求めた。保育者一人当たり5~20名の子どもについて回答が得られた。 以上の研究の結果,まず,今までの自己制御機能尺度の再検討がなされ,信頼性,妥当性が確認された。また,今年度は,年少児も調査対象に加えたことにより,年少児と年中児・年長児では,自己制御機能の因子構造が異なること,年少児から年中児にかけて特に著しい発達が見られることが明らかになった。さらに,2年間3回に渡る縦断研究を行ったことにより,親の養育スキルや情動表現スタイルが子どもの自己制御機能の発達に与える影響,さらには集団において現れる社会的スキルや問題行動への影響についても検討することができた。親から子どもへの関わりと子どもの自己制御機能の関係については,これらの関係が相互的で,どちらか一方のパスを仮定することは難しいとされる。しかし,今回縦断研究を行ったことにより,親から子どもの自己制御機能に与える影響があることを少なからず示すことができた点は今後の介入研究にとって意義があったと言えよう。
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