研究課題
本研究は、整理解雇をめぐる裁判として最も有名な東洋酸素事件を取り上げて、当該紛争が裁判にならざるをえなかった背景、長期化・大規模化した背景等を明らかにすることにより、整理解雇を行わなければならない場合、裁判を含む紛争になった場合に経営がとるべき経営社会政策を考察することを目的とする研究である。平成22年度は、次のような作業に取り組んだ。第一は、解雇をめぐる裁判に関する先行研究の知見の整理を行った。下記11に記載した拙稿(2011)は、その研究成果の一部である。同稿では次のようなことが明らかにされた。紛争の収束と紛争終結後の労使関係を円滑で安定的なものとするのは、近代的な労使関係であり、具体的には使用者側に組織的に異を唱えられる労働組合とその活動を認容できる経営陣であるが、肝心なのは、そうした近代的な労使関係が、解雇が発生する前に整備されていたかどうかにかかっているという点である。これが示唆するのは、本研究が最終的に示すべき整理解雇をめぐる経営社会政策が対処療法的なものよりも、予防的なものを中心とすべきであるということである。第二は、雇用調整を行わなければならない場合、そして雇用調整の実施が労使紛争になった場合、経営がいかなる経営社会政策を講じるべきなのか、考察する作業である。特に、雇用調整の際に求められる経営者の役割を考察した。その成果の一部は、下記11に記載した拙稿(2010)として発表した。雇用調整に焦点を絞った経営者職能論はこれまでほとんどなかった。同稿は、雇用調整に関する経営者の役割の中でも特に最高経営者層の役割が特に研究されていないこと、雇用調整の実施が迫られなくても、最高経営者層は中長期的な要員計画を示し、雇用調整のような難題を執行できる人材を内部で要請するのか外部に求めるのか人材の確保・育成をめぐる指針を確立すること等が求められていることなどを明らかにした。研究期間終了後も、下記11以外にも、研究成果を発表するための作業を継続している。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)
The Nepalese Management Review
巻: Vol.16 No.1 ページ: 21-29
川口短期大学紀要
巻: 24号 ページ: 77-86