本研究の目的は、アメリカ合衆国のハイスクールにおける職業教育改革の展開を、職業教育概念の転換を視点として解明することである。このことを通して、低学力者の受け皿から中等教育改革の中核的な取組へと変容を遂げた職業教育に関する、政策・運動・実践を分析する視座を構築することを試みる。そのために、以下の2つを研究課題として設定した。(1)1990年代末以降(1998年ごろから2006年)の職業教育改革の質的変容のプロセスの解明、(2)ハイスクールと中等後教育機関との接続の分析である。 これらの課題のうち、本年度は、渡米調査による情報収集を中心に関連文献・資料の収集と分析による調査を実施し、研究課題(1)の解決を中心に行った。渡米調査(2009年12月25日~2010年1月10日)の調査の主な目的地は、連邦職業教育研究センター(ケンタッキー州ルイビル)、全米職業教育協会本部(バージニア州アレキサンドリア)、南部地域教育連盟(ジョージア州アトランタ)である。連邦職業教育センターでは、センター長のStoneに対するヒアリング調査と関連資料の収集を行った。全米職業教育協会では、政策担当部長DeWittに対するヒアリング調査と関連資料の収集を行った。南部地域教育連盟では上級副代表Bottomsに対するヒアリング調査と関連資料の収集を行った。また、連邦職業教育研究センターが所在するルイビル大学の図書館や、連邦議会図書館にて関連資料の収集を行った。 これらの調査結果の検討を踏まえて、現行の職業教育法に基づく職業教育改革の推進を担う機関として設置されている連邦職業教育研究センターの役割と機能に焦点をあてて考察を行うこと必要があることが、今後の課題として明らかになった。
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