本研究の目的は、アメリカ合衆国のハイスクールにおける職業教育改革の展開を、職業教育概念の転換を視点として解明することである。このことを通して、低学力者の受け皿から中等教育改革の中核的な取組へと変容を遂げた職業教育に関する、政策・運動・実践を分析する視座を構築することを試みる。そのために、以下の2つを研究課題として設定した。(1)1990年代末以降(1998年ごろから2006年)の職業教育改革の質的変容のプロセスの解明、(2)ハイスクールと中等後教育機関との接続の分析である。 これらの課題のうち、本年度は、(1)渡米調査による情報収集を中心に関連文献・資料の収集と分析による調査を実施し、研究課題(2)の解決と、(2)国内学会における成果発表を行った。(1)渡米調査(2010年8月29日~9月5日)の調査の主な目的地は、教育開発アカデミー(ワシントンD.C.)、連邦教育省職業教育・成人教育局中等教育課(ワシントンD.C.)、全米職業教育財団(メリーランド州シルバースプリング)である。各機関で担当者へのヒアリング調査と関連資料の収集を行った。このことを通じて前年度に今後の課題として挙げた、ナショナルセンターの役割と機能について検討を深めることと、行政レベルでの学校間接続改善の取組状況について現状を明らかにすることができた。(2)日本比較教育学会および日本産業教育学会の自由研究発表を通して、2009年度および2010年度の調査によって明らかになった調査結果を報告し、広く参加者とディスカッションを行った。 これらの研究活動を通して、(1)職業教育研究ナショナルセンターの役割と機能に焦点をあててさらに考察を行うことと、(2)学校現場における学校間接続改善の実施状況の把握が今後の課題として明らかになった。
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