研究概要 |
平成22年度は、保育者志望の学生に対し、生活技術の正しい型の習得を目標とした実践を展開し、その効果の検討を行った。実践は、前年度の実技調査の結果から、正しい型の習得率が低く(1割~4割)、保育現場での実施頻度が高い「箸を使う」、「鉛筆を使う」、「雑巾を絞る」の3つの動作を取り上げた。実践は前年度の調査結果から、「型づけ」することに重点を置き、学生同士の「教える-教えられる」関係を軸とした実践内容とした。週1回10分間、正しい生活技術が身に付いている者が先生役となり、「型づけ」を意識しながら正しい型を教授する取り組みを3週連続計3回展開した。結果、実践前後の正しい型の習得者率は、「箸を使う」で4割から7割に、「鉛筆を使う」で1割から3割に、「雑巾を絞る」で3割から7割に増加した。3項目中2項目はほぼ自立基準に達し、実践の効果を確認することができた。「鉛筆を使う」に関しては正しい型で鉛筆を持つことはできるが、それが自動化するに至っていない者が多いことが習得率3割に留まった原因と考えられ、鉛筆の正しい型の習得には3週間以上の期間が必要と考えられた。また、実践期間中「箸を使う」,「鉛筆を使う」において実践時以外の取り組み状況の積極性が高く、特に「鉛筆を使う」は実践回数を増すごとに積極的性が高くなっており、定期的に短時間の型づけを実施することが有効に働いている様子が確認された。このように本年度実施した実践から、正しい型の習得は、型づけを重視することで短期間の実践でも効果が得られることが確認された。保育者養成校で比較的容易に実施可能な実践内容で効果が得られたことは意義があったと考える。現在、本実践をまとめた論文を投稿中であり、震災により9月に延期開催となっている学会でも発表を行う予定である。
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