理科授業における日常生活との関連性は、生徒の関心・意欲・態度の向上の観点から近年の学習指導要領において重視されてきた。本研究の目的は、理科の授業展開において日常生活との関連性を分析する手法を開発することである。 平成21年度は、まず、過去の国際比較調査の結果を用いることで、わが国の理科授業における日常生活との関連について整理した。生徒と教師を対象にしたアンケート調査結果の整理から、理科授業の導入部分と終末部分について日常生活との関連に課題があることが明確になった。この結果は平成21年度第3回日本科学教育学会研究会・南関東支部(テーマ:実社会・実生活との関連を重視した科学教育)において発表した。次に、教員経験が10年以上の熟練した理科教師(3名)と数学教師(1名)および研究助言者(1名)で研究会を組織し、2日間の授業分析研究会を実施した。研究会では、各参加者から本研究のテーマに沿った教育実践の発表がなされ、課題意識を共有するとともに、開発予定の分析カテゴリーについて意見交換を行った。さらに授業分析の手法の考案を目的に、授業分析の一例としてムーブを分析単位とした授業分析を実施した。分析には、授業プロトコルおよび授業ビデオを用いたが、これらはTIMSS1999理科授業ビデオ研究で収録され、一部公開されている授業を活用した。オーストラリアの理科授業の分析からは、理科授業の導入部分と終末部分以外においても日常生活との関連性を示す活動が出現することなど、いくつかの知見を得た。
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