本研究の目的は、新学習指導要領を踏まえ、生徒の言語活動を促進させ実験レポートの表現力を高めるような化学実験授業を協力校教諭、研究助言者とともにデザインした後、試行授業を実施し授業がどう機能したかを分析するとともに、レポート記述における表現力育成のための効果的な指導手法について検討を行うことである。 平成21年度は、教員10名研究助言者3名の研究会を組織し、年間3回の研究会を開催した。研究会では、現状の実験授業の進め方や高校現場での現状把握を行い、問題点を明らかにし、課題意識を共有した。協力校を中心に生徒実験でどのような教材が使用されているのか、日常使用している実験プリント(実験書)実践事例の収集を行った。現状では言語活動を意識しての教材は極めて少ないことを共通の認識とした。そこで課題意識・研究計画に基づき、言語活動を促進できるような教材開発、および授業実施改善案を検討した。特に、初期段階の実験レポート作成指導に重点を置いた。その際、レポート記述内容の評価について、生徒同士(班単位)で話しあい活動を取り入れ、どのような記述が望ましいかを検討させることを取り入れた。記述の評価のためのルーブリック評価表の作成を生徒たちに行わせ、相互評価表を利用した自己評価・相互評価活動を行い記述の改善につなげる「改善案」の考案・提示した。 研究を進めることで、協力校教諭の意識が大きく変わった。協力者からは、「どの時点でどのような力をはぐくみそのために、何を行っていけば良いかの見通しを立てながら年間計画を考案するようになった」との感想を得た。知識を与えるだけの授業から、生徒が主体的に学びつつ、表現力を育成するための取り組みを考案することができた。この結果、意義を感じ、学校全体の取り組みを計画する学校も出てくるに至り、平成22年度、当該校において実践予定である。
|