研究概要 |
本年度では、「多義図形(同一の刺激か複数の知覚を生じうる刺激の事。ある瞬間には、その内、一つの知覚が選択的に知覚される)から生じる知覚を被験者の意志により極めて高い成績で制御できる認知現象と、知覚交代に伴って生じた脳活動P300の計測実験」の研究成果がHuman Brain Mapping誌(IF=5.395)に受理決定となった。この脳機能計測研究の成果を元に、一試行解析ごとに知覚制御の成否を予測する解析アルゴリズムはすでに紙上発表済みであった。また、ATR神谷之康室長との共同研究において、その解析手法の改良をおこなっていた。その手法に、時間情報、周波数情報、空間情報にCSPなどを適用して効率的に特徴量探索する事により、P300の脳活動を約5秒以内に高精度(>90%)で予測できる様になった。その手法を、"文字綴り入力装置"に適用し、意志伝達支援システム開発に貢献した。 また、本プロジェクトの期間中に、MRI装置の使用を開始した。fMRIは脳内の電気活動に伴う血流量変化を計測する手法であるが、EEGと比べて極めて高精度な空間解像度で脳機能を計測できる優位性を持つ。今後、脳信号の正確なクラシフィケーションを行う上で、頭表面で計測したEEGの信号から、脳内の活動源を推定する手法の構築が大切と考えた。そのためには、逆推定の正解や拘束条件を用意する事が一般に望まれている。そこで、fMRIとDiffusion Tensor Imaging(DTI)を用いて、「脳内」の活動,「脳内」の構造を直接的に計測する方向性を新たにプロジェクトに加えた。すでに、新たな可能性を示す成果は、英論文への投稿を終了し、国際学会HBM2010、日本脳機能マッピング学会らにおいて対外発表する予定である。この成果を元に、個人間に存在する脳構造の差異を考慮した脳活動のモデリングと解析を推進する。現在、fMRIとEEGの同時計測システムの構築も進めており、上記事項の融合研究も検討してゆく。
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