研究概要 |
本年度は主に、p進微分作用素の研究を行った.ここ数年間,relativeなp進Hodge理論の研究を行ってきたが,そこでの主な手法はp進Hodge理論の族をパラメトライズする底空間に自然に付随する微分作用素を用いるということであった.この微分作用素は古典的な複素代数幾何学におけるGauss-Manin接続とよく似た性質をもつ.特に重要なのはこれらがGriffithsによる横断性を満たすことである.こうしたなか,本年度は,まず,この微分作用素を用いて得られた結果の論文を完成させ,すでに受理されている自身の結果と併せることによって,L.Bergerのde Rham表現とpotentially semi-stable表現が同値であるということが高次元でも成立することを示した.さらには,p進体上の良い退化をもつ代数多様体Xを整数環のSpec上の族と捉えて,上記のrelativeなp進Hodge理論において得られて結果の類似を辿ることによって,新たに微分作用素を定義し,いくつかの良い性質を満たすことを示し,論文を完成させ投稿した.特に,重要なのはこの新たに定義した微分作用素が上記と同様にGriffithsによる横断性の類似を満たすことである.さらには,この微分作用素は最近,数論幾何のさまざまな分野で研究がすすめられているBreuil-Kisin拡大のLie代数になっており,これからの数論幾何の研究の進展に役立つのではないかと期待される.また,2月から3月にかけておよそ二ヶ月間,ParisのIHPにおいて開催されたGalois trimesterに参加し,p進Hodge理論の最近の進展具合を知ることができ,またそこで色々な人たちとp進Hodge理論について議論を行った.
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