研究課題
本研究は、デバイスへの応用が期待されているグラフェン(単層グラファイト)の微細電子構造の解明とその電子構造制御、さらには積層数を制御することによって、新たなグラファイト層間化合物の作成とその電子構造の解明が目的である。本年度は、SiC上で育成されたグラフェンとSiC基板間に存在するグラフェンに類似した結晶構造を持つバッファー層が与えるグラフェンへの影響を明らかにするために、バッファー層のグラフェン化を試みた。バッファー層をグラフェン化するためには、SiC表面に水素原子を蒸着させ、水素終端化を行うことによって可能である。そこで、水素終端化を行うための真空槽を作成し、SiC上の水素終端化を試みた。その結果、バッファー層を持つSiCに育成した単層グラフェンが水素終端化によって、バッファー層を持たない2層グラフェンに変化したことを超高分解能光電子分光によって明らかにした。さらに、これまで観測されていた電子ドーピングの効果は、バッファー層によるものであることを本研究によって明らかにした。また、作成された2層グラフェンにアルカリ金属のカリウムを蒸着することによって、バンド間ギャップの制御に成功し、300meV以上の大きなバンド間ギャップを形成する事を明らかにするとともに、カリウムを蒸着していない2層グラフェンでも僅かながらのバンド間ギャップを形成していることを見出した。この結果からSiC上に育成された2層グラフェンもまたナローギャップ半導体の性質を持つ可能性を示している。
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