| 研究概要 |
本年度は,気象庁により観測・整備された東経137度定線資料を用いることで,北太平洋中層水の断面積変動特性を明らかにすることを目指した.1972年から2008年までの長期間にわたり解析を行った結果,東経137度を横切る中層水断面積は約10年周期で変動することがわかった.そこで,各緯度帯での層厚変動を調べたところ,北緯26度以北の海域で,その10年周期変動が顕著に現れることがわかった.次に,中層水断面積変動要因に迫るために,鉛直密度構造に着目した.結果,中層水断面積の増減は,その下部の渦位変動で説明されることがわかった.すなわち,断面積増加期には,中層水下部の鉛直密度勾配が小さくなり,低渦位化していた.一方,減少期には,高渦位化していた.この物理機構に迫るために,鉛直密度プロファィルにノーマルモード解析を適用した.結果,中層水下部の渦位変動は,第一次傾圧鉛直モードで説明されることがわかった.本年度で得られた成果は,Ocean Science Meetingで発表した.
北大西洋にも中層水は分布する.この中層水変動を理解するためには直上の大気変動場を明らかにする必要がある.そこで,北大西洋冬季の風応力変動特性を調べた.回転経験的直交関数解析・特異値分解解析等の統計的手法を使用した結果,冬季風応力変動は北大西洋振動(NAO)等の主要な大気テレコネクションパターンによりもたらされることを明らかにした.上記成果は,国際学術雑誌(Journal of Atmospheric Science誌)への掲載が決定した.
北太平洋中層水上部には亜熱帯モード水が分布している.中層水を含む水塊構造を解明するためには,亜熱帯モード水の振る舞いを明らかにする必要がある.そこで,亜熱帯モード水の形成量変動を調べた.結果,アリューシャン低気圧変動に対する傾圧応答の結果として,主水温躍層深度が変わることでモード水の形成量が変動することを明らかにした.上記成果は,国際学術雑誌(Geophysical Research Letter誌)に掲載された.
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