本研究課題は、研究代表者らが提唱する新たな非線形波動成長理論の適用例として、VLFトリガードエミッションの励起過程に着目し、従来の理論とは質的に異なる新たな観点からその生成機構を議論するとともに、近年新展開を見せ観測データの蓄積も進みつつあるトリガードエミッションの観測研究との比較から理論そのものの検証を目的として実施された。大規模並列計算によるプラズマ粒子シミュレーションを用いて、トリガードエミッションの発生機構を自己無撞着な計算機実験により再現すると共に、非線形波動成長理論に基づいた考察から物理素過程を究明、発生条件の本質的な理解を試みた。 交付された補助金は、研究活動の実施に必要とされる計算機環境の整備と、国内で開催された国際会議における情報収集ならびに計算機実験により得られた成果の報告のための旅費として使用させていただいた。計算機実験の結果からは、トリガードエミッションの発生過程で見られる周波数の時間的上昇率の大きさが、印加される波動の振幅に依存して変化すること、さらに、波動の発生過程で電子の速度分布に現れる電磁的電子ホールの大きさが、非線形波動成長理論に基づく予測と非常に良く合致することが示されており、学術論文としての投稿を準備している。本研究課題の遂行により得られた知見は非線形波動成長過程の本質的理解に大きく貢献することが期待され、また、本研究計画の発展として位置付けられる研究課題・若手研究(A)「放射線帯非線形波動粒子相互作用のシミュレーション研究」が平成22年度より開始する予定である。
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