研究課題
生命誕生前の地球において生命を形成する有機分子(生物有機分子)がいつどのようにして誕生したのかは未だ明らかになっていない。この生物有機分子の起源に関してはこれまで、主に宇宙飛来説、海底熱水説、隕石海洋衝突説が提案されている。宇宙飛来説、海底熱水説はNASAを中心に欧米で盛んに研究が行われてきた。一方、隕石衝突生成説はこれまであまり注目されていなかったが、Furukawa et al.2009の模擬実験によりアミノ酸やカルボン酸の生成が示され、その重要性が明らかにされた。しかし、隕石の衝突現象には、速度、飛翔体の組成など、その変化が衝突化学反応に大きな影響を及ぼす事項が多く存在する。また、無機炭素からの有機物生成であるため、これまで明らかになっている生成物の他にも多種の有機分子の生成が期待される。本年度は、昨年度に作成した揮発性有機分子(VOC)回収用のVOC CollectorとGC/MSを用いて試料の分析を行った。昨年度は、特定の条件で、炭化水素、アルコール、アルデヒド、ニトリルなど、多種類のVOCの生成が確認されつつあった。しかし、衝突回収実験とVOCの定量的捕集には一定の失敗率があるため、本年度は何度も実験と分析を繰り返し、データ収集を行った。また、試料室内の酸素分圧を変えるため、銅製の衝突試料の容器を導入して実験を行った。この結果、生成する有機物に一定の酸素分圧依存性を見出した。これは衝突する隕石の種類によって生成する有機物が異なるということを示唆する結果である。
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Nature Communications
巻: 2 ページ: 196