研究課題
若手研究(スタートアップ)
本研究は、自由表面を持ち自己重力作用下にある粘性熱伝導性ガス(流体星)の初期値境界値問題(自由境界問題)の研究である。平成21年度の研究成果は以下の通りである。(1)ガスが理想気体である場合の空間1次元的運動を考察し、系の長時間挙動(時間漸近挙動)を得た。大きさに制限のない(滑らかな)初期データから滑らかな一意の解が構成できることを示し、さらにその解が時間無限大でも爆発せずある定常的な状態へ収束することを示した。その定常的な状態は初期データによって完全に決まるものである。系の長時間挙動を得るには解の時間一様なアプリオリ評価を導出する必要がある。該当するアプリオリ評価は、既に報告者により、やや強い仮定の下で得られていたが、これを改良し物理的によりリーズナブルな条件(仮定)下で導出しなおすことに成功した。この条件は、天体が安定的に存在しうるために要請される物理的環境を示唆していると考えられる。この結果は既に論文としてまとめており、現在査読付き学術雑誌に投稿準備中である。(2)ガスが理想気体である場合の空間3次元球対称運動(中心球核のまわりの運動)を考察し、解の長時間挙動(時間漸近挙動)を得るための解析手法を大きく前進させた。この問題では、外力場を与える重力ポテンシャルが本質的な意味で時間依存しているため、外力項に関係する各種項の時間一様な評価が困難であったが、それを解決しうる解析手法を開発した。現時点では解の(適切な関数空間における)アプリオリ評価を完全に得るには至っていないが、完全な解決に向けて大きく前進したと言える。
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Seminar Notes of Mathematical Sciences, Ibaraki University Vol.12
ページ: 94-108
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