研究課題
本研究課題は、量子統計物理学と量子情報科学の境界領域の開拓を目的としている。本年度は(i)量子アニーリング法やそれに代わる手法の提案及び性能評価、(ii)2次元格子上VBS状態のエンタングルメントエントロピーの計算手法の開発、(iii)量子ビット間の相互作用推定の3つについて研究を行った。以下に具体的な内容を記す。(i)フラストレーションのあるイジングスピン系における、時間依存する横磁場に対する応答について検討した。温度を徐々に下げていった場合と、横磁場を徐々に弱めた場合とについて、共通点と相違点を網羅的にまとめた。また、量子アニーリングは熱揺らぎの代わりに量子揺らぎを巧みに操作することにより、安定状態を得る計算手法である。温度や量子項の代わりの揺らぎとして、我々は新しいタイプの揺らぎ(透明状態)を考案し、その相転移の性質や動的現象について考察を行った。(ii)量子情報科学において基本的な量であるエンタングルメントエントロピーは主に、1次元量子系について精力的に調べられてきた。我々は2次元格子上のVBS状態におけるエンタングルメントエントロピーの計算手法を開発した。その手法を用いて、エリア則を満たすことを確認し、また無限系のエンタングルメントエントロピーの値を高精度な大規模数値計算によって得ることに成功した。(iii)量子情報処理実現のためには、量子ビット間の相互作用を高精度に推定する必要がある。我々は量子状態の実時間発展を追跡することにより、量子ビット間の相互作用を推定する手法を提案した。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (26件) 備考 (1件)
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