本年度の研究では、衛星に搭載し天体を観測するために必要な広視野バーストモニタの構成要素であるガンマ線検ニットの基礎設計・試作を行った。 はじめに半導体光センサ(APD)とCsI結晶を用いてシンチレータの形状・ライトガイド・センサ寸法の最適な組み合わせを調査した。常温で半導体検出器を用いる場合、30keV程度の微弱な信号は熱雑音に邪魔されて検出が困難になる。調査の結果、大型の結晶を用いる場合、シンチレーション光の収集率を高めるためには、光センサの受光面面積を大きくするのが最も有効であることを確かめた。そこで我々は、光センサとして受光面積1cm角の大面積APDを採用し、逆にシンチレータの読み出し面のサイズはAPD受光面と同程度とし、ライトガイドによる光損失を最小限に抑えることにした。この結果、光損失は大幅に減少し、APDの量子効率を80%とした場合の光収集率は約40%を達成した。 次に、読み出し回路の性能を決定付ける前置増幅器の選定を行った。電荷有感型増幅器では入力静電容量に比例した雑音電荷が生じるため、複数種類の増幅器に対して性能評価を行い、容量270pFの1cm角APDに適した増幅器を選定した。さらに後段の整形回路については、10kHzの計数計測を実現するために整形時定数を1usとし、高速計数特性を優先する設計とした。 上記の構成で実際にガンマ線検出器を製作し、その動作特性を調べた結果、最悪条件である+20℃において30keVのX線を検出することに成功した。また、擬似信号入力や各種ガンマ線源を用いた高レート照射試験では、10kHzまでほとんど数え落としなく計数計測が可能であることを確認しており、目標としていた検出性能を完全に達成できた。
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