研究課題
昨年度開発した試作回路を用いたエンジニアリング・モデルを製作した。衛星バス側からの要請で衛星全体の角運動量・質量を抑えるため各センサユニットを270g以下に抑えなければならなかったが、放射線耐性のあるエンジニアリングプラスチックを筐体に用い、荷電粒子のシールドを兼ねた軽量な筐体を設計製作した。放射線環境試験としては、センサであるCsI結晶の放射化について放医研のサイクロトロンを用いて検証実験を行った。この結果、地上600kmの太陽同期軌道の場合、放射化と脱励起の両過程が打ち上げ後数日以内に平衡状態に達することが明らかになった。この状態での特性X線・対消滅線のイベントレートは10カウント以下であり、実際の観測に問題ないレベルであることを確認できた。また、読み出し回路を構成する各種半導体素子(オペアンプ・DAC/ADC・高圧電源等)については、トータルドーズ効果・シングルイベント効果の調査を行い、軌道上で10年以上、各素子が安定して動作することを確認した。ガンマ線カウンタの計数情報からバーストの位置決定を行うアルゴリズムについては、(1)あらかじめ準備した応答行列と観測値を比較する方法と、(2)より単純な重心計算による方法の2種類を検討した。検出器の構造・衛星構体を忠実に再現したモンテカルロシミュレーションによる検証の結果、3°グリッドの応答行列を用いた場合、両者の位置決定精度は同程度となり、偏光観測が可能な明るさGRBに対して偏光計の視野よりも十分に小さい4°以内の決定精度でガンマ線到来方向を推定できることを確かめた。
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Physica E : Low-demensional Systems and Nanostrucutures
巻: 43 issue 3 ページ: 685-688