本研究の目的はガンマ線バーストや活動銀河核などの遠方の高エネルギー天体からの遅延ガンマ線を用いて宇宙磁場を観測・制限することである。遅延ガンマ線とは、天体からの高エネルギーガンマ線が宇宙空間で赤外線光子と対消滅することによって生成される電子・陽電子が宇宙背景放射光子を逆コンプトン散乱することによって生じるガンマ線である。このガンマ線がガンマ線バーストや活動銀河核のフレアの発生からどの程度の時間遅れてやってくるかを測ることにより宇宙空間の磁場を測定することができる。今年度は特にガンマ線バーストからの遅延ガンマ線の研究を行った。具体的にはガンマ線バーストからの遅延ガンマ線と残光の強さを比較し、遅延ガンマ線の観測可能性について議論した。ほとんどのガンマ線バーストには残光と呼ばれる高エネルギー放射が付随しているため、遅延ガンマ線が隠されてしまって観測不可能になり磁場探索が困難になる可能性がある。そこで磁場の強さや残光の時間発展に関して様々なケースを想定してどちらが明るいのかを比較した。その結果、宇宙磁場の強さが十分であれば標準的な残光よりも遅延ガンマ線は長時間持続し、ガンマ線バースト発生からおよそ1日後には遅延ガンマ線の観測が可能であることが示された。この研究によって宇宙磁場の探索方法としてのガンマ線バーストが非常に有望であることがわかり、これまで考えられてきた宇宙磁場探索の研究の方向性が正しさが示された。
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