昨年度に引き続き、高次元Qファノ多様体が、双有理的同値な多様体同士を同一視してもなお有限族で尽きないほど数多く存在するということ(双有理的非有界性)に関する研究を行った。本研究はLinによる3次元Qファノ多様体の双有理的非有界性を起点とし、6次元以上の一般次元の場合に対しては以前に証明を与えた。また、前年度はさらなる部分的結果として、5次元における当該結果を得ていた。本年度はこれまでの一連の証明を改良することにより、3次元以上の全次元に対して統一的に議論することに成功し、結果としてQファノ多様体の双有理的非有界性の研究を完全に解決した。この結果の帰結として、次元(3次元以上)を固定した有理連結多様体の双有理的非有界性が直ちに得られるが、さらなる詳細な結果を得ることに成功した。極小モデル理論により、有理連結多様体の双有理分類は、有理連結的森ファイバー空間と呼ばれる特殊なファイバー構造が付与された多様体の双有理分類へと帰着される。本研究において、有理連結的森ファイバー空間は、次元(3以上)及びその底空間の次元(1以上)を固定しても、双有理的に非有界であることを示した。底空間の次元が0の場合のみが残るわけであるが、それらは高々端末特異点しかもたないQファノ多様体であり、有界であることが予想されている。したがって、本研究は有理連結多様体の双有理的非有界性という視点において考えうる最大限の結果を与えているとみなすことができる。
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