ジーゲル型アイゼンシュタイン級数のフーリエ係数決定とそれに関係する様々な保型形式の算術的研究を行った。論文作成についても相当量の時間を使った。 1. 以前からのRoland Matthes氏との研究、すなわち3次元上半空間のマース形式に対するカトック・サルナック対応、それを用いたエルミート版斉藤・黒川リフトの解析的証明、レベル付エルミート・アイゼンシュタイン級数のフーリエ係数の決定、についての論文最終原稿を作成し学術誌に投稿した。これらの研究を第4回福岡数論研究集会において発表し、報告集原稿を作成した。以上はRoland Matthes氏との共同研究である。 2. 以前、桂田英典氏と行った捻ったケッヒャー・マース級数の明示式とその応用について、数理解析研究所考究録原稿を作成した。以上は桂田英典氏との共同研究である。 3. 以前からの長岡昇勇氏とのp進ジーゲル・アイゼンシュタイン級数及びそれにまつわるセール型、メイザー型合同についての論文がハンブルグ大学紀要に受理された。そのための論文改訂、校正を行った。以上は長岡昇勇氏との共同研究である。 4. 2種類のp進エルミート・アイゼンシュタイン級数が実際のエルミート保型形式になること、そのひとつはエルミート・アイゼンシュタイン級数になることを以前示していた。この研究を推し進めた。 (1) ヘッケの収束因子を用いることで、低い重さのときも2種類のp進エルミート・アイゼンシュタイン級数が実際のエルミート保型形式になることを示した。 (2) エルミート・アイゼンシュタイン級数をジーゲル上半空間に制限したものとジーゲル・アイゼンシュタイン級数の差を取ることでジーゲル・カスプ形式が得られる。このp進極限は上の4(1)及び3の結果からジーゲル保型形式であるが、これがカスプ形式であるか否かという問題を考察した。 以上4(1)(2)は菊田俊幸氏との共同研究である。
|