希土類酸化物により形成される強磁性半導体薄膜は、スピンの自由度をも利用したスピントロニクスデバイスとして、近年、非常に注目されている。特に、希土類酸化物を用いた強磁性半導体は、次世代スピントロニクスデバイスとして注目されており、超薄膜化による磁気光学効果の増大といった機能性の向上が報告されているものの、デバイス作製に必要不可欠な単結晶超薄膜育成の困難さのために、超薄膜状態における基礎的な機能性の理解が進んでいないのが現状である。そこで、本研究では、超高真空分子線エピタキシー(MBE)法を用いて、異なる膜厚の希土類強磁性半導体EuO単結晶超薄膜を作製し、その機能性と電子状態の関係を詳細に調べる。そして、得られたEuO単結晶超薄膜の物性および電子状態の膜厚依存性を詳細に比較・検討することにより、新規希土類スピントロニクスデバイスの開発の基礎となる電子状態の知見を得ることを目的として研究を行った。 平成22年度の研究では、EuO単結晶超薄膜において平成21年度に立ち上げたin-situ磁気光学(SMOKE)装置を使用し磁気特性を決定し、UVSOR-IIBL5Uにおいて3次元角度分解光電子分光測定を行った。その結果、膜厚の減少とともに強磁性転移温度が減少するとともに、Eu 4fとO 2p状態の混成が弱くなることが明らかになった。この結果は、スラブ法を用いたEuO薄膜における電子状態計算の結果とも矛盾しないことを明らかにした。
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