PIC(Particle-in-Cell)法をもちいた従来の電磁粒子コードに適合細分化格子(AMR:Adaptive Mesh Refinement)を適用した新しい粒子コード(AMR-PICコード)の超並列化を実施し、磁気リコネクションのテスト計算に対して並列化率99.8%という高い並列効率を実現することに成功した。AMR-PICモデルにおいて高い並列化率を得るため、従来のモデルから主に2つの改良をおこなった。1つ目は、差分方程式系をポアソン方程式のような大域的演算を含むものから、局所演算のみによって構成されるものに変えた。2つ目は、プロセス間の負荷分散を維持するために、プロセスごとの分割領域(ここでは"ブロック"と呼ぶ)の構造を、現象の時間発展にしたがって動的に変化させ、常に各ブロックがほぼ同数の粒子を保持するように調節する手法(適合ブロック法)を考案した。これらの改良によって、AMR-PICコードの並列計算性能は飛躍的に向上した。 次に、完成した超並列AMR-PICコードをもちいて、磁気リコネクションの大規模な3次元シミュレーションを実施した。その結果、高速磁気リコネクション過程において磁気中性線周辺に電磁波動が励起することが明らかになった。この波動は、電子のメアンダリングスケールの波長を有するため、電流の担い手である電子を散乱させ異常電気抵抗を発生させる。つまり、リコネクションにともなう磁気拡散過程は本質的に3次元的であり、従来の2次元リコネクションの描像は大きな変更を迫られる可能性がある。
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