研究概要 |
太陽の外側の大気であるコロナは百万度程度あり、どのようにしてそのような高温な大気を生成するかは太陽物理学上非常に重要な問題である。また、太陽活動が盛んな時期には太陽フレアという大規模な爆発現象が起こり、数千万度までプラズマが加熱される。これらのプラズマ加熱現象を理解するには、観測・理論の両面から十分に考察する必要がある。太陽コロナ観測ではプラズマから放射される光を用いるので、ダイナミクスだけでなく放射まで含めて議論する必要がある。特に、太陽コロナ程度の温度(数百~千万度)のプラズマからは、イオンからの輝線による放射が支配的でイオンの電離状態をプラズマの加熱や運動と共に理解しなくてはならない。中でも、太陽フレアでは瞬時にプラズマを数十倍まで加熱するので、フレアによって生成された高速のジェットは太陽の表面に衝突するまでに電離が平衡状態に到達しない可能性がある。そこで、昨年度開発した電離過程を計算するコードを用いて、磁気リコネクション定常解を用いて、磁気リコネクション領域で電離非平衡プラズマからのFeXII, FeXVIII-FeXXIVの各波長での輻射を計算した。今回、昨年度考慮できていなかった、熱伝導、輻射冷却の効果も含めて考察をおこなった。熱伝導を考慮する事で、スローショックの上流にハローと呼ばれる領域が形成され、それに伴い電離が平衡に近づくのを促進させる効果がある事もわかった。しかし、熱伝導が十分に効果的であったとしても、電離の時間スケールが磁気リコネクションダイナミクスのタイムスケールと同等または長いため、高速流からは高階電離のプラズマから十分な輻射が出ず、通常のコロナ活動領域と同程度の電離階数からでる事が明らかになった。また輻射冷却に関しては太陽コロナ中ではダイナミクスに影響を及ぼすほどには、電離非平衡を考慮してもならない事がわかった。
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