平成21年度は、金属コア-岩石マントル構造を持つ分化天体の衝突破壊条件を調べるために、常温および低温環境下で実験を行う環境を整備し、衝突実験を開始した。 初めに、分化天体の金属コアから衝突破壊により鉄隕石を放出する条件を調べるため弾丸に対して十分大きな層構造試料にクレーター形成実験を行った。金属試料として、常温で延性を示す鉄素材を使用した。このとき、常温および低温環境下で実験を行い、両者の衝突による結果を比較した。低温環境を達成するために、誠料を液体窒素温度にした状態で内部温度をモニタリングしながら実験を行った。常温および低温下で、明らかな衝突結果の違いが観察され、低温下でのクレーターの深さは常温下と比較して、より深いという結果が得られた。これはマントル層の厚みを変化させても同様の結果が得られた。以上より、分化天体は、低温環境下での金属鉄の塑性-脆性転移により、鉄隕石を放出しやすい条件になると考えられた。次年度では、さらに実験条件を拡げるととに、金属破片の放出速度を計測し、重力による再集積の効果も考える予定である。 また、分化天体が大規模衝突により破壊する条件についても調べるため、弾丸サイズの数倍程度の分化天体模擬試料を作製し、完全破壊実験を行った。この時、常温でも脆性的に振る舞い、かつ動的破壊強度が鉄隕石と類似するような物性を持つ金属素材を衝突実験により特定した。これにより、常温下においても、金属鉄の完全破壊を行うことが可能となった。次年度では、この金属素材の低温下での評価を合わせて行う。 本研究の意義は、実験としては、初めて天体内部構造および環境温度を考慮し、その衝突破壊条件を調べたことである。特に、分化天体を模擬したような衝突破壊実験は現在までほとんど行われておらず、本実験により、太陽系で微惑星が惑星へと熱進化する様々な段階での天体衝突の結果の推定を行うことが可能となる。
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