研究概要 |
本研究では,地球のような金属コアと岩石マンルに分化した天体(分化天体)の衝突破壊・再集積条件を実験的に明らかにした.実験手法として,2段式軽ガス銃を用い,衝突天体を模擬した弾丸を~7km/sまで加速し,分化天体模擬試料に高速衝突させる衝突実験を行い,分化天体の衝突破壊強度や破片速度を調べた.平成22年度は,21・22年度で調べた分化天体模擬試料の金属コアの破壊条件を試料の内部構造・衝突エネルギーで系統的に整理し,金属コアガ破壊(鉄隕石が形成)するための天体の内部構造を明らかにした.本結果より,コアの天体に対する質量比(コア質量比)が1/3以下であるとき,現在の小惑星帯の平均的な衝突速度でほとんどコアが破壊されないことが分かった.鉄隕石が形成されるためには,コア質量が天体の3割以上を占めている必要がある.本結果は,22年度末にLunar and Planetary Science Conferenceで報告を行った.本研究の重要な点は,天体におけるコアへのエネルギー分配量と内部構造の関係を定量的に調べたことにある.これにより,ベスタや鉄隕石などの母天体で生じた衝突現象を推定できる可能性がある.現在,探査機ドーンが向かっている分化した内部構造を持つ小惑星ベスタの形成過程に対し,観測結果を踏まえ,本結果から,制約を与えることが期待される. 惑星形成過程初期において,小惑星ベスタのような分化した小天体が多数形成された可能性が示唆されている.本研究より,同じ質量の天体でも,天体内部構造の違いにより,衝突結果が大幅に変わることが明らかにされた.これより,惑星系が衝突進化する過程で,天体の内部構造が与える影響は大きいと考えられる.惑星形成過程に対して重要となる分化天体の衝突破壊現象を実験的に初めて,系統的に明らかにしたことが,本研究の意義であり,本実験により,微惑星が惑星へと熱進化する様々な段階で予測される天体内部構造から,熱進化過程を考慮した天体衝突進化過程を調べることが可能となる.
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