研究概要 |
赤道海大陸域におけるコールドサージの実態を把握するため,長期データとして1998年から2009年の再解析データおよび衛星観測データを用いて,気候学的特徴を解析した.特に赤道域における強い北風に注目するために「赤道越え北風サージ」を独自に定義し,「赤道越え北風サージ」発生時の環境場の特徴を明らかにした.これまで主に南シナ海北部で議論されてきたコールドサージに対して,未解明であった赤道上における実態が示された.これまで注目されてきた南シナ海北部のコールドサージと海大陸における対流活動との関係をより具体的に解明する上でも,本研究における「赤道越え北風サージ」の議論は非常に重要であると言える. また,所属機関において2010年1月15日より2010年2月14日の間に実施されたインドネシアにおける集中観測に参加し,高層ラジオゾンデ観測データ,地上気象観測データ,およびドップラーレーダデータを取得した.観測の実施によって,海大陸域の対流活動に伴う大気循環場の応答をより定量的に評価することが可能となり,コールドサージに注目することによって,大気大循環を駆動する熱源として,未解明であった現象別評価の実現も期待される. さらに,観測で得られたレーダーデータと数値モデルを利用して,コールドサージに伴って発達する日変化降水系をシミュレーションし,その発達過程を調べるために,上記の集中観測に合わせて,海大陸域における日変化降水系の予報実験を行った.これは,本課題で実施予定のモデルによる予報実験→観測→モデルへの観測データ同化インパクト実験→観測というサイクルの前半部分であり,観測とモデルの融合による最適な観測システムの開発研究にも貢献する.
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