研究課題
平成22年度は、かんらん岩の白金族元素濃度-オスミウム同位体比測定手法を確立するため、標準試料の繰り返し分析データから、迅速且つ精度・確度とも良好な分解条件(時間、温度、試料量、使用する酸など)を決定する基礎実験を主に行った。「カリアスチューブ法」「マイクロウェーブ法」「高温高圧灰化法」により得られたデータや作業効率を比較検討した結果、「カリアスチューブ法」を採用し、先行研究と調和的なデータを迅速に得られるルーチンを決定した。また上記実験と並行し、かんらん岩掘削試料の主要元素濃度分析を実施し、計130試料のデータを取得した。平成23年度は、主成分元素組成を基に選び出した東太平洋海膨由来のかんらん岩試料(30試料)を対象に、前年度に最適化された手法により白金族元素濃度-オスミウム同位体比分析を行った。その結果、白金族元素は(1)蛇紋岩化を伴う変質作用によりほとんど移動しない、(2)太平洋中央海嶺下における高い部分融解作用を経験しても玄武岩マグマによる抽出度は非常に低い、といった重要な知見が得られた。また、オスミウム同位体比、白金族元素濃度パターン、主成分元素組成の間に認められた相関関係は、現在の中央海嶺下におけるプロセスのみでは作り得ず、過去の融解イベント(少なく見積もっても10億年に相当)を反映する不均質性が残存していることが判明した。同様の解釈は、オフィオライト、マントル捕獲岩、大西洋や北極海の深海性かんらん岩データから既に議論されているが、本研究結果は、データの質/量に関してより高い信頼性があり、マントル不均質性の成因を議論する上での重要な証拠として位置付けられる。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件)
地学雑誌
巻: 120 ページ: 52-64
Earth and Planetary Science Letters
巻: 301 ページ: 159-170
Journal of Petrology
巻: 51 ページ: 1849-1890