研究概要 |
平成21年度の主な研究計画は(1)MC-ICP-MSと気化法を組み合わせてRe-Os同位体迅速測定体制を確立すること,(2)三畳紀~ジュラ紀前期の幅広い年代をカバーする岐阜県坂祝セクションのチャート試料を入手し(新潟大学との共同研究),Os同位体を用いて長期間にわたる古海洋環境を解読するための準備を行うことであった. (1)に関しては,2009年5月にハワイ大学のRavizza, G.准教授の研究室を訪問し,気化法によるOs測定を先駆的に取り入れたラボを見学した.この際に,気化法によるOs測定の様々なノウハウを習得した.帰国後,JAMSTECのMC-ICP-MSによる気化法測定体制の立ち上げに取り組んだ.2009年秋には,気化法によりOs同位体が安定して測定できる体制が確立し,カリアスチューブによる試料の酸分解の後に,複雑な前処理を経ずともすぐにOs同位体測定を行えるようになった.気化法によりOs標準溶液の測定を行い,確度・精度ともに良好にOs同位体測定が行えていることを確認した.また,GSJの標準岩石試料であるJCh-1, JMS-2についてMC-ICP-MSとN-TIMSによるデータの比較を行い,サンプル不均一性の範囲内で両者の値が良く一致することも確認した.これらの分析方法に関して,学会発表を2件行った. (2)に関しては,2009年8月および10月に新潟大学を訪問し,坂祝セクションに関する共同研究を開始した.現在,チャート試料の粉末試料の調製が終了し,平成22年度から様々な化学分析に移る予定である.したがって,概ね予定通りに研究は進捗している.
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