研究概要 |
平成22度の研究計画は,昨年度に入手した坂祝セクションの堆積岩試料に対して,(1)XRF, ICP-QMS分析による主成分・微量元素組成の把握,(2)昨年度に確立した分析法とMC-ICP-MSを用いることにより,Re-Os同位体分析を行うことであった. (1) に関しては,76個のチャート試料の粉末試料および薄片を作成し,JAMSTECのXRFによる主成分元素組成分析(10元素)を行った.また,東京大学との共同研究によりICP-QMSによる微量元素組成分析(54元素)も完了した.その結果,三畳紀前期に,As, Mo, Uの異常濃集層を発見した.いずれも,酸化・還元状態に鋭敏に反応する元素であることから,パンサラッサ海深海底の酸化・還元環境が大きく擾乱されたと考えられる.本研究結果は,今年度のいくつかの学会において報告予定である. (2) に関しては,2億4千万年前から約4千万年間のOs同位体比組成変動の復元を,坂祝セクションのチャート試料を用いて行った.その結果,As, Mo, Uの濃集層において,ReおよびOsの濃集が認められた.また,特に地質学的イベントが報告されていない時代においても,Os同位体比が0.2~0.6の間で変動していることが明らかになった.昨年度に確立した分析法に関しては学術雑誌に論文を投稿中であり,2件の学会発表を行った. 以上のように,研究期間の2年間において,分析方法の確立→堆積岩試料の入手→全岩化学分析はほぼ予定通りに進んでおり,本研究は順調に行われたといえる.
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